「オリーブオイルは健康にいい」という話、不思議に思いませんか?油なのになぜ!?その答えは、オリーブオイルの脂肪酸の種類に隠されています。
オリーブオイルとは、オリーブの果実を搾って採る油です。オリーブオイルのカロリーは100g当たり894kcal、大さじ1杯(12g)当たりで107kcalと高めです。バターのカロリーは大さじ1杯当たり85kcal程度であり、バターよりもオリーブオイルの方がカロリーは高くなります。
では、糖質はどうでしょうか。オリーブオイルに含まれる糖質は、大さじ1杯当たりでほぼ0gであり、糖質制限中の方には嬉しいですね。なお、バターに含まれる糖質は、大さじ1杯当たり0.1g程度で、糖質はオリーブオイルの方がごくわずかに少なくなります。
オリーブオイルには糖質が含まれないものの、カロリーの面ではバターよりも高いのに、なぜ健康に良いといわれているのでしょうか。
ここからは、本題のオリーブオイルの成分についてご紹介します。
油(油脂)の主な成分は脂質の構成要素である脂肪酸で、オリーブオイルに最も多く含まれる脂肪酸は一価不飽和脂肪酸という種類になります。
脂肪酸は、構造の違い(脂肪酸の構造のなかに炭素どうしの二重結合があるか)によって、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分類されます。脂肪酸はこの分類ごとに特有の働きがあり、不飽和脂肪酸は血液中の中性脂肪やコレステロールを低下させる働きがあります。
また、不飽和脂肪酸は、二重結合を1つだけ持つ一価不飽和脂肪酸と二重結合を2個以上持つ多価不飽和脂肪酸(n-6系脂肪酸・n-3系脂肪酸)に分けることができます。
ちなみに、二重結合の数が多いほど化学的に安定しないため酸化しやすいのですが、一価不飽和脂肪酸であるオリーブオイルは比較的安定していて酸化しにくいため、加熱調理にも適しています。
オリーブオイルの成分の7割は、「オレイン酸」という不飽和脂肪酸です。
オレイン酸は次のような嬉しい作用があります。
多価不飽和脂肪酸(n-6系脂肪酸)であるリノール酸が5~10%、α‐リノレン酸が0.7%ほど含まれています。これらは必須脂肪酸(必要量を体内で合成できないため積極的な摂取が推奨されている)であり、リノール酸は体の組織が正常に機能するために必要な成分で、不足すると皮膚炎などの症状が現れます。
また、α‐リノレン酸は血管拡張作用があるため、高血圧の予防が期待できます。
※α‐リノレン酸はえごま油やグリーンナッツ油、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)は青魚や魚介類の油に多く含まれており、こちらも必須脂肪酸です。
脂溶性ビタミンのA、D、E、Kが含まれていて、特にビタミンEが豊富です。ビタミンEは体内の酸化防止や血行促進の効果があり、ビタミンAは粘膜の保護や体内の酸化を防いでくれます。
また、ビタミンDはカルシウムの吸収を助け、ビタミンKは血液を固めたり、骨を丈夫にしたりします。
ヒドロキシチロソールの抗酸化力はビタミンCの10倍ともいわれ、シミを薄くするなどの美白効果のほか、動脈硬化の予防効果や抗炎症作用などがあります。また、オレウロペインも同様に、高い抗酸化力から美白効果や動脈硬化の予防に効果があり、オレオカンタールは、解熱鎮痛剤の成分であるイブプロフェンにも似た鎮痛作用や、抗炎症作用を持ちます。
これらの抗酸化成分は、オリーブオイル自体の酸化も防ぐ働きがあります。
油は「健康に悪い」「ダイエットの敵」というイメージがある方もいらっしゃるかもしれませんが、油(脂質)は五大栄養素の1つであり、細胞膜や核酸、神経組織などを構成する主要な成分で、大切なエネルギー源でもあります。必須脂肪酸のように、不足すると体に悪影響を及ぼすものもあり、体に良い油を適量摂ることが重要です。
健康や美容のためにオリーブオイルを摂りたい方は、1日大さじ1杯程度を目安にしましょう。調理に使う油をオリーブオイルに変えるのもおすすめです。また、体内に長く留めることができないというポリフェノールの性質上、少量をこまめに摂るようにするとよいでしょう。