前回はお茶の発酵について掘り下げ、発酵度の違いによる4種類のお茶の特徴を紹介しました。
今回は、われわれ日本人に一番親しみがある、不発酵茶についてもう少し詳しく紹介しましょう。
不発酵茶とは、茶摘後、茶葉内の成分の変化を防ぐために、最初に蒸すか、炒るかなどの熱処理をして茶葉の発酵を止めた後(酸化酵素の不活性化)加工されるお茶のこと言います。
いわゆる緑茶がこれに相当し、茶葉が緑色を保っているのは、茶摘後すぐに発酵を止めることで酸化しないようにしているからだそうです。緑茶のきれいな緑は、この工程のおかげなんですね。
製法は大きく分けて、蒸し製と釜炒り製に分けられますが、さらに栽培の工程で、茶樹に覆いをして日光を遮るものと、日光を遮断しないでつくる露地栽培にも分類されます。
それぞれの栽培方法や製法の違いなど特徴をまとめておきましょう。
日光を遮断して栽培し、摘採後は煎茶と同じ工程でつくられます。お茶の木と遮光用の藁や寒冷紗の間に空間をつくる棚掛けという方法で、遮光します。
「玉露」は、緑茶の王様とも言われ、最高級のお茶として知られていて、味・香り・色のどれをとってもとても高い評価を受けています。
日光を遮断することにより、茶葉は柔らかく、葉緑素も増加します。さらに、お茶のうまみ成分であるテアニンが渋み成分であるカテキンに変化することを防ぐため、玉露は旨味が強く渋みが少ないお茶となるのです。
三大産地は、八女(福岡)・宇治(京都)・岡部(静岡)です。
玉露と似ていて、日光を遮断して栽培し、摘採後は煎茶と同じ工程でつくられますが、遮光方法の違いがあります。玉露とは異なり、お茶の木に直接寒冷紗などを掛ける直掛けで、光を遮ります。
産地により異なりますが、遮光の期間は玉露より短めの3週間程度が多いようです。
イメージ的に、「玉露」と「煎茶」の中間に位置しているお茶です。
日光を遮り光合成を行わせないことで、旨味成分であるアミノ酸が苦味、渋みの成分であるカテキンへ変化するのを阻害します。これによって、通常の煎茶よりも甘味や旨味の強い大変まろやかなお茶になります。
玉露と同じく、棚掛けで遮光して栽培した葉を蒸してつくるのですが、違いは、揉まずにひたすら乾燥させることと、玉露より5日ほど長く棚掛けして遮光することです。
碾茶とは抹茶の原料で、碾茶を石臼で挽くなどして粉末状にしたものが「抹茶」と呼ばれています。
抹茶は、茶葉ごといただくことになるので、その効果も他のお茶より大きいと考えられています。
日光を遮らずに栽培(露地栽培)し、新芽を摘み取り、蒸熱→粗揉→揉捻→中揉→精揉→乾燥の工程でつくられるごく一般的なお茶のつくり方です。
茎茶や棒茶、粉茶などもこれに含まれます。
「深蒸し煎茶」は、通常の「煎茶」とつくる工程は同じですが、蒸し(蒸熱)の時間を2~3倍長くしてつくられたものをいうそうです。
流通量の85%を占め、緑茶の中でも一番馴染みのお茶が「煎茶」だと思います。遮光しないでつくるので、光合成によってカテキンの量が多くなり、甘味・渋み・爽やかさのバランスがいいのが特徴です。
「深蒸し煎茶」は蒸し時間が長いため、一般に香りは弱めですが濃厚な味わいが特徴です。
新芽が伸びて硬くなった葉や茎などを原料として普通煎茶と同様に製茶したお茶。夏の強い日差しを浴びている為、渋み成分を比較的多く含むのが特徴です。
「番茶」の定義は地域によって異なることが多く、はっきりしていないのですが、「主流ではない、”番外”のお茶」と言う意味でそう呼ばれているようです。
また、摘採の時期が外れていたり、品質が落ちていたりするものを番茶と呼んだり、ほうじ茶のことを番茶と呼ぶ地域もあるそうです。
「煎茶」などと同じく、蒸気で蒸す(蒸熱)ことで発酵を止め、その後、粗揉、揉捻、中揉、仕上再乾、乾燥という工程でつくられます。
煎茶の最後の工程の「精揉(せいじゅう)」を行わないため、丸みを帯びた形状で仕上げられています。
日本での生産量は少なく、佐賀や長崎、鹿児島や宮崎の一部の地域で生産されている程度です。
お店などでは、下記の「釜炒り製玉緑茶」と合わせて「グリ」「グリ茶」などとも呼ばれていますので、これなら耳にしたことがある方も多いと思います。
「釜炒り茶」とは摘採した茶葉を釜で炒ることで発酵を止めたお茶です。
これは、中国式の煎茶の製造方法で、蒸して揉む工程が発明されるまでに主流だった方法です。
採取してすぐ茶葉を釜で炒った後、揉捻、水乾、締め炒り、乾燥という工程でつくります。
日本では、九州の一部(佐賀など)でしか生産されていない珍しいお茶です。
お茶の製造工程で出てくる副産物や、他の物を混ぜてできる不発酵茶も紹介しておきます。
一般的に番茶を焙煎(焙じた)したお茶のことをいいます。
焙煎によって、「カテキン」が壊れ、お茶独特の苦みや渋みが抜けます。また、茶葉を炒ることで香ばしい香りが加わり、口当たりがよくなります。さらに加熱により一部のカフェインが気化するため、胃の負担が減り、お子さんや高齢者など多くの方が安心して飲めるのが特徴です。食後のお茶としてもなじみがある方が多いと思います。
番茶などの緑茶に炒った玄米を混ぜたお茶です。炒った玄米が香ばしく香りがよいのが特徴です。筆者も抹茶入り玄米茶が大好きです。
煎茶の製造工程できる粉末を粉茶と呼び、ティーバッグの原料や、緑茶サーバーなどでも利用されています。
煎茶の製造工程で葉から外された茎を利用してつくるお茶です。茎茶を炒ったものが棒茶と呼ばれ、値段は安いのですが、テアニンが多くうまみが強いのが特徴です。
以上、日本の緑茶に代表される「不発酵茶」について、簡単なつくり方や、種類をそれそれの製法の違いや特徴を挙げて説明しました。
今まで漠然と耳にしていたお茶の呼び方が、少しわかるようになったのではないでしょうか。
次回は、半発酵茶について紹介する予定です。