ヨウ素は、甲状腺ホルモンを作る主成分であり、代謝を調節したり子どもの成長を促進したりする働きを持つミネラルで、別名「ヨード」とも呼ばれています。体内には、約15mg存在しており、ほとんどが甲状腺に存在しています。体内では合成することができないため、ヨウ素を豊富に含む海藻類などから摂取する必要があります。また、強い殺菌力がありウイルスや細菌など幅広い殺菌効果があります。
甲状腺は首の真ん中、のど仏のすぐ下にある小さな器官で、重さが約15~20g、大きさが4~5cmほどあります。蝶が羽を広げたような形をしており、気管に張り付くように存在しています。女性の方が男性より大きく、高い位置に存在しており、体の代謝や成長などを調節する「甲状腺ホルモン」が作られています。通常、甲状腺ホルモンは多すぎたり少なすぎたりしないように調節されていますが、働きに異常が生じるとホルモンバランスが崩れ、様々な症状を引き起こします。

甲状腺ではヨウ素を原料に甲状腺ホルモンを作っています。甲状腺ホルモンには、サイロキシン(T4)とトリヨードサイロニン(T3)の2種類があります。これらは、脳の視床下部から分泌される甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)の刺激によって脳下垂体から甲状腺刺激ホルモン(TSH)が分泌され、それによって甲状腺から甲状腺ホルモン(T4・T3)が血中に分泌されます。また、血中に放出された甲状腺ホルモン(T4・T3)の濃度が高くなると甲状腺刺激ホルモン(TSH)の分泌が抑えられ、甲状腺ホルモン産生は低下します。これをネガティブフィードバックといい、この機能によって血中の甲状腺ホルモン濃度は常に一定に保たれています。

「日本人の食事摂取基準」によると、ヨウ素の1日摂取量の推奨量は成人男女で150μg、上限量は3000μgとなっています。
ヨウ素は海水中に多く存在しているため、昆布やわかめ、海苔、寒天、イワシ、カツオなどの海産物に多く含まれています。特に、昆布に多く含まれており、1g(4センチ角)だけで1日の所要量の10倍も摂取できると言われています。
日本人は、海藻類や魚介類を食べることが多いため、不足することは稀です。日本では欠乏症よりも過剰症による甲状線腫が多く、健康な人であれば過剰に摂取した分は排泄されますが、稀に海藻類やサプリメントの過剰摂取により、過剰症がみられることがあります。

ヨウ素の摂取が不足すると、甲状腺ホルモンの生成が出来なくなります。そのため、脳下垂体からの甲状腺刺激ホルモン(TSH)の分泌が増加し、甲状腺の発達を促進することで、ヨウ素不足を補おうとします。この状態が続くと、甲状腺の肥大や甲状腺腫が起こります。また、小児の不足では発達障害や発達遅延の原因になるとも言われています。
甲状腺ホルモンを作るために必要な一方で、過剰に摂取し続けると甲状腺ホルモンを作るのを抑えるようになり、その結果、低下症を発症することがあります。通常の食生活では、過剰症の心配はありませんが、昆布などの海藻類の極端な過剰摂取やヨウ素を含むうがい薬の多用は注意が必要です。

橋本病などの甲状腺機能低下症の方で、「ヨウ素過剰により甲状腺が腫れている」と診断された場合には、医師の指示に従い、海藻類の摂取や昆布だしなどを控えることで改善することがありますので、医師の指示に従うようにしましょう。