INDEX | 食の概要 || 食べ物の3つの働き | 栄養素の基礎知識 | 代謝のしくみ || トラブル解決エコレシピ | ライフステージ別食育 | 食 de eco | 食 Do! 楽 |

食 Do! 楽 (食を楽しむためのコンテンツ)

食 Do! 楽 コラム

眠りを助けるトリプトファン

昔からよく眠れないときは、牛乳を飲むといいって言うけれど、何か根拠はあるのかしら?
それは、牛乳にトリプトファンやカルシウムが含まれているからです。
今回は、トリプトファンを取り上げてみましょう!
トリプトファンとは牛乳から発見された必須アミノ酸の1つで、人体で合成することができません。よって、食べ物から摂取することが必要になります。タンパク質を作る材料として使われる分を除いては、肝臓や腎臓で分解されて、エネルギー源として利用されます。
トリプトファンはさまざまな食品のタンパク質に含まれていますが、量は多くありません。
トリプトファンを多く含む食べ物には、チェダーチーズ、牛乳、卵黄、高野豆腐、アーモンド、バナナ、きな粉などがあります。
トリプトファンを多く含む食べ物

<ナイアシンを作る>
トリプトファンから、体内でナイアシンが合成されます。
ナイアシンの合成にはビタミンB2ビタミンB6も必要なので、それらの摂取も心掛ける必要があります。
また、アルコールの大量摂取により肝機能が低下してくると、トリプトファンからナイアシンへの転換率が著しく低下するので注意しましょう。

<セロトニン・メラトニンを作る>
セロトニン・メラトニンを作る
トリプトファンはナイアシンの他にも、セロトニンやメラトニンといった精神を鎮めたり、睡眠を促す神経伝達物質の合成にも関わっています。トリプトファンは脳に運ばれると、ビタミンB6ナイアシンマグネシウムともに「セロトニン」という脳内物質を作る原料となります。

セロトニンは、興奮や不快感を鎮めて精神を安定させたり、寝つきを良くする効果があり、不足すると睡眠障害になったり、不安感や憂うつ感があらわれます。
また、感情や情動に関係しているだけでなく、消化、生殖、体温、呼吸など多くの体の機能とも密接に関係しています。セロトニンそのものはトリプトファンを材料として脳内で合成するもので、食べ物や飲み物で補うことができません。

さらに、セロトニンには「メラトニン」という睡眠ホルモンの分泌を促す働きもあります。メラトニンは睡眠のサイクルを正常にしたり、免疫力を高めたり、活性酸素を減少させるなどの作用があります。
メラトニンの分泌量は年齢を重ねるほど減少するといわれており、お年寄りが長時間の睡眠をとれなかったり、深い眠りにつくことができないのは、メラトニンの減少が原因だともいわれています。

脳のトリプトファン濃度が高まればセロトニンが増えて、催眠効果が期待できるため、アメリカではトリプトファンは天然の催眠剤として、催眠効果や精神安定効果を期待する人々に人気があります。

<トリプトファンとチロシン>
トリプトファンは、ドーパミンやノルアドレナリンといった神経伝達物質の生成に、チロシンと一緒に関与しています。ドーパミンとノルアドレナリンは気分を高揚させ、活力を生み出し、やる気を出させるホルモンです。
これまでの研究では、脳や行動障害の治療に効果があることが分かっており、不眠症やうつ病の治療にも期待できます。赤ちゃんのミルクにトリプトファンを加えることで、赤ちゃんの寝つきがよくなった、また、トリプトファンを学習能力に問題のある子どもに投与すると、子どもが落ち着いて勉強するようになったという報告もあります。
脳とトリプトファンとチロシンチロシンもトリプトファンもアミノ酸の一種ですが、チロシンとトリプトファンは競争する関係にあり、量の多いほうが脳に取り込まれるという性質があります。チロシンは脳を刺激して活発にする物質で、トリプトファンは脳を休息させリラックスさせる神経伝達物質です。タンパク質を含む食品を食べた時に、トリプトファンよりもチロシンのほうが多い場合、チロシンが脳に取り込まれるので、脳が活発になります。

<トリプトファン事件>
トリプトファン事件とは、1988年から1989年にかけて、昭和電工が製造した健康食品のトリプトファン製品が、大規模な食品公害事件を引き起こしたものです。
この食品公害事件は、主としてアメリカで発生したもので、被害者は女性に集中し、1,543名もの健康被害者を出し、38人が死亡しています。

トリプトファンは必須アミノ酸であり、大量に摂取する以外、健康被害を招くといった問題は起きません。昭和電工のトリプトファン製造過程において用いられた遺伝子組み換え微生物が、予期せぬ2種類のタンパク質を作り、それが不純物として製品に混入した事が原因と見られています。
この事件は遺伝子工学が産業に応用されて以来、初めて起きた大規模な食品公害事件でした。

トリプトファンは、その他にも免疫系に働きかけて、がんを予防する、コレステロールや血圧を調整する、性機能の回復、更年期障害の症状を緩和するなど幅広く効果があります。
アルツハイマー型認知症やパーキンソン病、エイズなどの症状改善にも期待されています。
Copyright (C) 2017 「食 Do!」は、健康管理士一般指導員 の 特定活動非営利法人 日本成人病予防協会 が制作しております。